2001年 4月号 金沢礼賛 元 泉鑑定事務所代表 泉 祐順 様
   私は金沢生まれの85歳の老翁です。
 私は生まれるとともに四国の善通寺で育ち、以来60歳になるまでの間、小学校時代に約1年半、中学校時代に3年、終戦後に2年を金沢で暮らした以外は、京都、熊本、東京、札幌、横須賀、大阪、福井で過ごし、その間各地で其の他の名勝、名物を鑑賞賞味する機会に恵まれた。
 60歳にしてはじめて金沢に居着き、改めてじっくりと金沢を観察する事が出来るようになった。
 それまでは見向きもしなかった兼六園の優美幽玄さに目を見張り、金沢の米の比類ない美味しさと和菓子の旨さに誇りを感じた。
 金沢の人々が普段何気なく食べている嗜好品、副食に数多くの金沢独自の物が有り、之が又旨い。
 之等を知らずすごしているのはほんとに勿体無い事だと思う。
 冬の蕪寿司、鱈の子つけ、ただみの酢の物にただみ汁、冶部煮、昆布絞め、大根寿司、海鼠の卵巣を干したくちこ、このわた、河豚の筋、こんか鰯、ゴリの佃煮、胡桃の佃煮、野菜のきんじ煮、五色饅頭のいがら、羊羹、夏場だけのよね饅頭、ささげ餅など思い出すままに列挙した。
 まだまだ有る筈だが、兎に角金沢の食文化は天下随一である。
 金沢に生まれてほんとに良かった。