From: uchiyama@kenoh.hits.ad.jp (内山鋼 =?ISO-2022-JP?B?GyRCMGwbKEo=?=) Date: Wed, 05 Feb 1997 00:34:20 +0900 To: oil@seiryo.ac.jp Cc: vag@theo.osaka-med.ac.jp Reply-To: fitnet@kanazawa.fitnet.ad.jp Subject: [fitnet 817] 重油除去作業FAQ (2/5) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 重油除去作業監督者各位  【重油除去作業についてのFAQ】 2月5日版 Q:このFAQはなに? A:重油漂着現地で重油除去作業を管理監督する方を対象にしたガイドブックです。 Q:FAQの内容はなに? A:注意すべき事項(状況判断、対策手段)、要望されている事(期間、対策)、   その他(一般的な油作業の常識等)をまとめてあります。 Q:重油除去時に必要な予備知識は? A:重油といっても種類は多くあり、それぞれ特性が違います。   まず基本的な作業対象(重油、海岸、海上)の特性、有利条件、不利条件等   を正確に把握する事が必要です。重油特有の毒性についても調べれば十分です。   現在漂着した重油塊は人手ですくい取るしか有効な除去手段がありませんが、   人体に対する影響がもっとも心配されますので十分な注意が必要です。   今後は最終的な除去手段や温暖期の除去対策を準備する必要があります。  ●流出重油の特性   今回流出した重油はC重油と呼ばれるもので、暖房を目的として運搬されてい   たものです。   成分中には硫化水素や炭化水素を含む場合が多いですので、毒性に十分注意が   必要です。   C重油は重油の中でも特に比重が重く、不純物を多く含んでいます。また、低   温環境下では粘性が強く扱いがやっかいです。   海上や沿岸部で漂流するうちにどんどん揮発物質がなくなり固形化します。   また水分を取り込み、アメ状からチョコレート状になりもちの様な形態に変化   していきます。細かく分離した場合は小さなオイルボールとなり、沿岸部で   沈澱する場合もあります。  ●北陸沿岸部海岸の特性   冬季の北陸沿岸部は陸上向きの季節風が非常に強く、波も高くなります。   したがって、航空機や沿岸海上での船舶の運用は非常に困難です。   天候が落ちついたわずかな時間が勝負となります。   一日のうちでも天候の急変は日常的ですので地元関係者の判断を尊重して、   無理な行動は避けて下さい。   砂地では重油塊や浸出成分が地中に浸透し、非常に回収が難しくなります。   岩場等の波浪で洗われる場所では、自然風化による拡散分解が期待出来ます。  ●重油流出海域の特性   海上には海流と部分的な潮流及び、風の影響が大きい表面流があります。   流出重油に関しては、表面流及び風向の影響が大きく、沿岸地形による風向   変化や特異な潮流にも注意が必要です。   関係学術機関で流出のサンプルシミュレーションが行われています。 Q:作業前に事前に準備する事は? A:作業者の体調に充分気を付けてください。   皮膚を保護するためにあらかじめハンドクリームやファンデーションを顔、腕等   に塗っていくと効果的です。   作業着等重油が付着する衣類については、表面にシリコンオイル(粘度の高い物 )   を事前にすりこむ事で後始末時の洗浄が非常に楽になるという指摘があります。   また、皮膚に付けたり臭気を吸い込まない様、防護具等を必ず準備して下さい。   コンタクトレンズを使用している作業者は目の痛み、炎症を起こしやすいです。   できるだけはずして作業するよう事前に指導してください。   **** ●警告● ****   心臓循環器系の持病のある人は、急な過労による突然死は充分ありえます。   呼吸気管器や神経系の持病、療養中の人は寒冷地での症状悪化がありえます。   高齢者の寒冷地作業、重労働はそれだけで充分過酷な労働環境です。   「零下の作業は、それだけで有害危険労働である」&   「寒冷が原因になった発病例はたくさんある」というのが、専門医の指摘です。   事前の健康調査を必ず行い、通院、薬剤服用者については特に注意して下さい。 Q:作業に使用する器具、薬剤、除去方法等で注意する事は? A:現在漂着している重油は水分含有率が5割以上になっていて非常に重いです。   ひしゃく、バケツ、袋等は丈夫な物を使用し運搬しやすい形で回収して下さい。   界面活性剤や凝固剤等の有機化学薬剤使用はできるだけ沖合海上に限定し、   海岸部で使用する場合は事前に関係学術機関や漁協の判断をあおいでください。   また、重油汚染地域の特性にあわせて適切な除去方法を選択して下さい。  ●重油汚染地域の特性による除去手段例(人手を除く)   ・海上沿岸部     回収船機械回収・吸着マット・拡散薬剤散布等   ・海上海岸部     ジェットポンプ回収・吸着マット・生物分解薬剤等   ・海岸砂浜部     吸着マット・表面部重機収集、選別・生物分解薬剤等   ・海岸岩場部     洗浄機溶融回収・生物分解薬剤散布等   **** 注意 ****   ジェットスチーム(高圧洗浄機)による溶融回収は、特に緊急を要する地域に   使用を限定し、周囲を吸着マットやオイルフェンスで封鎖し、2次汚染に十分   配慮してください。   漂着量が少ない場合は地中に大部分が浸透してその後の回収がより困難になり   ます。   **** 参考 ****   除去方法については専門家、学術機関等のアドバイス、研究報告に注目して下   さい。   現在各研究機関で現地重油サンプルをもとに効果的な回収方法、処分方法が研究   されています。 Q:現地の重油除去作業で注意する事は? A:現地は風雪の強い海岸で寒冷地がほとんどです。   疲れたら休憩ではなく、一定時間毎(1〜2時間)に必ず休憩を取るようにして   ください。また、休憩の都度、各自が体調の変化を冷静にチェックしてください 。   また、作業中に疲労を感じた作業者には個別の対応で休憩する体制をとってく   ださい。   **** ●警告● ****   重油には揮発成分や有害成分が含まれています。活動時には皮膚に付けない   様に、揮発有臭ガスは極力吸い込まない様にしてください。   活動中に気分が悪くなったり、倦怠感や脱力感を感じたらすぐに監督者に報告   し、救護所や医師がいる場合はささいな事でも相談して下さい。 Q:一般的な油作業と同様に注意する事は? A:現地作業時はもちろん、作業後の体調にも相当期間注意する必要があります。   皮膚や目、のど等に異常を感じたらただちに医師の診察を受けてください。   また、通院については一週間以上様子をみながら行って下さい。   **** ●警告● ****   作業中に体調が急変して亡くなられたボランティアの方がおられます。原則   として自分の行動は自己責任の範囲で行ってください。   怪我や病気になっても現地やボランティア団体からの保障は有りません。 Q:作業後及び後始末で注意する事は? A:汚れた器具、作業衣を始末する時に皮膚に付かないよう十分注意して下さい。   洗浄はおがくず、洗剤等で行い、灯油等2次汚染の発生する恐れのあるものは   使用しないでください。   回収重油、汚染廃棄物等は密閉状態で保管し、周囲への2次汚染に注意して   ください。また、高波、風雪に耐える場所で保管してください。   **** ●警告● ****   袋、ごみ等重油に汚染された物は絶対に焼却しないでください。   有毒ガスが発生します。できるだけ専門の焼却場で処分して下さい。   灯油洗浄は極力避けてください。多量に皮膚から経皮吸収されたり、揮発ガスを   呼吸吸収して、急性の中毒や突然死が起こり得ます。また、作業後の影響も懸念   されます。 Q:作業期間の設定、判断はどうするの? A:重油がなくなるまで当分の間という事になりますが、かなりの長期戦になり   そうです。   作業を効率よく行うための一時的な中断や時期設定を考慮する必要があります。   今はボランティアの支援がありますが、長期的には各自治体の負担になると   思われます。   2月中は重油も固定化していますが、気温上昇とともに2次流出、液状化が   想定されます。   3月以降の除去作業については現在とは別の想定による検討が必要です。   最終的な除去手段と実施時期の選定も今から調査、準備する必要があります。 Q:作業地域の設定、判断はどうするの? A:一度状況回復した場所にも再漂着、再汚染の危険はまだまだあります。   作業地域の特定にあたってはむやみに集中しないように、また再漂着、温暖期   の影響を考慮して優先順位をつけて作業してください。   また、砂地では地中に浸透して除去されていない重油分がかなりあります。   最終的な除去手段が決定するまで、手をつけずに保留しておく方が効率的な汚染   箇所もあると思われます。 Q:作業中の事故、トラブルの対策はあるの? A:作業者に対しては作業中、作業後の対処について事前のオリエンテーション   を必ず行ってください。事前、及び作業後の準備事項、調査事項について適切   な指導、処置を行ってください。  ●ボランティアの場合   極力現地でボランティア保険に登録出来る様にしてください。(県負担が良い)   各団体の登録時に付帯事項として自動的に保険登録される場合もあります。   個人で入れるボランティア保険もあります。普通は全て自己責任です。   事前の受付登録時にはボランティア保険の窓口をあわせて案内してください。  ●行政関係者及び作業請負業者の場合   公務による作業の場合は普通の公共事業と同様の扱いです。   特に重油除去作業に特定した保険を設定しない場合は、作業後の病気や負傷   についての通院、入院費用は通常の健康保険の範囲となると思われます。 Q:問い合わせ先は? A:重油の毒性、除去手段については学術機関、身体への被害については医療機関、   具体的な除去作業、時期等については各自治体に問い合わせてください。  ●情報収集について  ・流出油災害メーリングリスト(北陸地域)    ML:oil@seiryo.ac.jp    ML:oil@ml.pref.niigata.jp  ●重油特性について  ・(財)日本中毒センター    住所:つくば総合診療センター内    電話:0990−50−2499  ・環境総合研究所    住所:〒141 東京都品川区東五反田5-19-2 電話:03−3444−2514 FAX:03−3473−5090 mail:aoyama@eri.co.jp  ●除去手段、地域特性について  ・海上災害防止センター  ・金沢大学 自然科学研究科 田崎研究室    電話:0762−64−5723   FAX:0762−64−5746  ●動植物への影響について  ・海棲哺乳類(鯨類:クジラ・イルカ、鰭脚類:アザラシ・オットセイ)の漂着  (生死を問わず)時の連絡先    名称:国立科学博物館 動物研究部    住所:〒169東京都新宿区百人町 3-23-1    電話:03-3364-2311 内線7168 または 03-5332-7168   FAX:03-3364-7104  ●ボランティアについて  ・重油災害ボランティアセンター(福井)    住所:福井県坂井郡三国町安島こども広場内 ボランティアセンアー    電話:0776−81−3431   FAX:0776−81−3947  Internet:http://www1.meshnet.or.jp/~response/oil.htm −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 上記内容はインターネットのMLおよびHPから集約しました。 転載・引用は自由ですが各自の責任において行って下さい。 --------------------------- ()() --------------------- 内山鋼一@新潟県三条市   (^^) VAG        PFC01521@niftyserve.or.jp ☆ \ (ボランティア支援  uchiyama@kenoh.hits.ad.jp 《_(@ グループ)スタッフ