3日目〔1月22日(木)午前〕
(写真右:当会代表 加藤三郎)
第3議題は「制度の変革、経済」であり、日本側から柳沢賢一郎氏と加藤三郎当会代表、アメリカ側からはバリー・ラレイ教授が発表しました。
まず柳沢氏が「癌と地球環境」という興味深いタイトルで発表しました。氏は、欧米、日本、東南アジアの3地域で癌による死亡率の増加は、それぞれの長期的な経済水準の動向と一致していること、癌の原因はストレスと疲労であり化学物質やウイルスなどの外的刺激はトリガーにすぎないことを説明します。さらにストレスの原因は、近代科学・技術・経済成長の連鎖による@社会変化の高速化、A複雑化、B反自然であり、これは地球環境問題でもあることを指摘します。癌と地球環境問題に共通する原因を解決し、持続可能な社会を実現するためには、科学・技術・経済成長の連鎖を見直し、物質文明に決別すること、自然を一元論に基づいて有機的に把握すること、経済成長を抑制し、成長の対象を精神活動の分野に転換することを提案しました。
次に加藤代表が、制度部会として検討を重ねてきた自販機問題について「自動販売機がもたらす利便と問題」というタイトルで発表しました。まず自販機の利便性として、利用者からは@24時間いつでも使用できること、A対面販売に比べて、素早く購入できること、業者からはB閉店後の客の取込みになること等を挙げ、「使い捨ては豊かである」という意識の浸透によって自販機が増えたことを説明しました。次に、利便の反面にもたらされる問題として@電力の無駄使い、A景観や交通の阻害、B空き缶など廃棄物の増加、C人間関係の希薄化、D青少年への悪影響を挙げました。さらに自販機問題への対応として、自治体などが取り組んでいる景観条例やリサイクルの推進を紹介し、市民やNGOは何ができるかという問いかけをしました。自販機の普及台数や缶飲料消費の日米比較を図表を使って紹介すると、アメリカ側の参加者からは、日本での人口や面積に対する自販機の数の多さに驚きの声が上がりました。またアメリカでは、自販機のほとんどが広告としての規制を受け、建物の中の目立たないところに設置してあるということでした。
最後に、バリー・ラレイ教授からはCO2問題に関連して、「A Revenue-Neutral Green Tax」というタイトルで環境税についての発表がありました。ハワイ州は合衆国の中でも最も高い税金を取られており、しかしそれが地元の産業に全く役立てられていないということです。ハワイはエネルギーの90%を石油の輸入に依存しており、その購入のために多くの貨幣が海外に流出し、一方で個人による自動車の利用が減らないため、交通渋滞と大気汚染が発生しています。所得税を減らしてその分を輸入化石燃料に課すことができれば、自動車の利用が減って渋滞やCO2発生などの環境問題が緩和されるでしょう。また、環境税の税収をエネルギー自給のための産業開発(例えば、サトウキビを利用したバイオマス発電など)に使えば、貨幣の流出は少なく抑えることができ、また新たな雇用が創出できるでしょう。このように所得税の減税分を環境税に充てることで、環境保全だけでなくハワイの産業にとってもプラスであるということを氏は述べました。会場からは、この提案に多くに人が賛成しました。また、CO2削減のためにはまず公共交通などの大量移送手段が必要であるといった意見も出されました。
どの演者による発表も大変興味深く、普通の国際会議では知ることができないような細かな状況を理解することができました。近代科学のあり方を根本的に見直すべきとの提案はとても斬新でしたし、自販機問題はハワイでの今後の都市計画に、環境税は日本の経済に、互いに参考にすることができるのではないかと思いました。
(報告:松尾和光)
3日目〔1月22日(木)午後〕
第4セッションでは、「ビジネス」「エコテクノロジー」をテーマに日本側から3名、アメリカ側から2名の発表があった。
東京学芸大学教授の小澤氏は、日本のストレスの高い都市の住宅事情から、環境共生型の新しい公営住宅について自身が携わったモデルケースを発表した。1990年以降、アメニティー・改善・創造・快適・水・緑をテーマに、「エコポリス」という概念の基、日本の農家を手本とした持続可能な家づくりを目指したもので、場所に対するセンスや感性を養うことの重要性が説かれた。驚くことにこの公営住宅は昨年、東京であってもエアコンを使用しなかったという。ソーラー発電&風力発電システムの設置やビオトープなどの配慮もみられた。
マサチューセッツ州工科大学生であるホルヘ・バレラ氏は、究極のエコエネルギーで走る夢の自動車ソーラーカーについて発表した。1985年アメリカで初めてこの車の開発に成功し、1997年にはサンレースにて全米2位の実績を持つ同大学であるが、彼の悩みは晴れの日以外にこの車が走らないこと(あたりまえ)の他に、製造コストやメンテナンスに金がかかり過ぎること、また非常に壊れやすいことなどをあげた。これらから将来一般市場への参入は課題が大きいと言えるが、一方ヨーロッパでは4人乗りタイプの研究開発が進んでおり、更にグリーンタクスをソーラーカー開発に充てるという声も上がっているとのこと。
日本の国立環境研究所部長である後藤氏は、先進国の産業社会をどうしたら持続可能なものに転換できるのか、今世界的なプロジェクト(IHDP)がはじまろうとしているとの発表の中で、それは全ての産業活動をそのもたらす環境への影響から切り離すことであるととなえた。また、産業転換(IT)のポイントとして@国の施策のベースA持続可能B消費者のアクションを掲げた。更に、テクノロジーの役割をもう一度考え直す時期に来ている今、ゴミ処理ではなくリサイクルすることへの方向転換を促した。
ハワイの大きなリゾートホテルの専務であるランス氏は、同ホテルのハウスオペレーションシステムのあらゆる面に持続可能な経営方法を取り入れ、また従業員1万2千人及びその家族含め約4万6千人に対し、徹底的な社員教育を行った結果、電気や水の節約に大きな成果が得られたとの報告をした。更にハワイを美しい島とするための従業員のゴミ拾いや緑化、ゴミのリサイクルの実践を紹介した。このホテルは持続可能なホテル経営のモデルとなっているという。
日本の廃棄物処理業者の田中氏は、まずアメリカに比べ非常に零細な日本の廃棄物処理業界の発展なくして廃棄物処理は進まないことを強調した。日本は国土が狭く埋め立て処分場の確保ができないため、焼却処理が主体にならざるを得ない。そのことから発生したダイオキシン問題は今最も注目されている問題の一つ。日本における年間排出量のうち、焼却工程からの排出量が95%を占めていると言われ、ほとんどの焼却施設で何らかの対策が必要とのことであった。また、廃棄物の資源化問題は、分別収集や新しい技術開発、更に経験に基づくノウハウなど必要であり、リサイクルの難しさを浮き彫りにした。
夕方から、ワイキキ近くのホテルに場所を移し、アメリカ人参加者をもてなす日本側主催のスペシャルイベントが開催された。日本人による詩吟や民謡踊りを披露、更に歌やゲームで大いに盛り上がり楽しい親善の一時を過ごした。
(報告:中村徳彦)