持続可能な社会を支えるシステムづくりへの
市民・ NGOの参加のあり方
についての調査報告書

1998年10月
21世紀の環境と文明を考える会

目次
はじめに
1.各ヒアリングの概要
  1.1 Clean Water Action Alliance(CWA)
  1.2 Physicians for Social Responsibility (PSR)
  1.3 Second Nature(SN)
  1.4 Union of Concerned Scientists(UCS)
  1.5 Conservation Law Foundation(CLF)
  1.6 Mass Audubon Society(MA)
  1.7 The Ecotourism Society(TES)
  1.8 Natural Resources Defense Council(NRDC)
  1.9 Environmental Defense Fund(EDF)
  1.10The Nature Conservancy(TNC)
2.総括
  2.1会員数などの比較
  2.2全体的な特色
     (1)豊富な財源
     (2)会員の多さ
     (3)ビジョン、活動目的、活動内容が明確
     (4)政治家やマスコミを有効に活用する
  2.3アメリカのNGO活動をさささえるもの
     (1)税制
     (2)市民の社会的貢献に対する意識の高さ
  2.4今後の日本のNGOの課題
     (1)明確なビジョンと活動内容を示す
     (2)自立した精神と柔軟なアプローチ
     (3) 持続的な財政基盤
     (4)政策形成能力
     (5)コミュニケーション能力

はじめに

 持続可能な社会を構築していくには、個人の価値観やライフスタイルを変えていくと同時に、大量生産・大量消費・大量廃棄を基盤とした現行の社会システムそのものを変えていく必要がある。欧米の先進諸国では、こうした社会システムの変革に、市民の意識やNGOの活動が深く関与しており、大きな成果を上げている。
 本調査では、昨年のドイツ調査に引き続き、持続可能な社会を支えるシステムの構築に、市民、特にNGOがどう関与しているのかをNGO活動の本場アメリカで調査することによって、今後の日本のNGO活動の参考とすることを目的として行うものである。

■調査期間 平成10年9月21日〜平成10年10月1日
■調査した者 加藤 三郎  21世紀の環境と文明を考える会 代表
藤村 コノヱ  同会 理事

1.各ヒアリングの概要

 

1.1 Clean Water Action Alliance(CWA)
    相手:Cindy Luppi氏 9月23日
 
【設立】
1970年 クリーン・ウォーター・アクト法ができた時に設立。地域レベルで活動するCBO
【会員等】
会員75万人で、全国に20のオフィスを持つ。
【予算等】
ボストンオフィスには4人のスタッフが常駐するが、ボストンの年間予算は、12万$(約16,200,000円)。
【会費】
いろいろなレベルがあるが、基本年会費は25$〜60$、減額もある。
【主な活動】
きれいで安心して飲める水を確保することだが、水以外のこともやっている。

例えば宗教グループなど他のグループと一緒になって、環境衛生問題、再生可能エネルギー資源問題、気候変動問題・特に石炭火力発電所問題など(マサチューセッツ州は石炭火力発電が主体となっているため)。

現在の最大の関心事は気候変動問題で、再生エネルギー資源を電力会社や消費者がより多く使用するようになるための州の法案を準備し、それが議会を通過するよう強く働きかけたりしている。さらに、化学物質など地域レベルで問題になることは何でも取り上げている。日常の活動は、リーダーの養成や他のグループとの連携の仲介など。
(感想)
ヒアリング当日、行政、企業、NGOの代表者が一堂に会して再生可能エネルギーに関する提案並びに意見交換が行われた。その時間をさいてのインタビューのため、この会の活動そのものについては詳細に聞けなかったが、再生可能エネルギー問題に関して、このような場が持たれていること自体驚きであった。

日本でも、行政・企業・NGOが一同に会して意見交換を行うことは少しずつ始められているが、まだまだ十分とは言い難い状況である。特に、エネルギー問題についてそのような場がもたれることは皆無に等しい。エネルギー政策に関して国が強力な権限を持つ日本と、州が権限を持つ米国との違いであろうが、それにしても温暖化問題最大の課題であるエネルギー問題、それも再生可能エネルギーに関して、既にこの州ではこうした話し合いが進められ、その結果が州法である「電力再構成法」として成立、98年3月より施行されていること、さらに様々なNGOが行政・企業と同等の立場で会議に参加している点は注目に値する。こうした政策提言の場が与えられることこそ、社会システムの変更にNGOが関与できる道筋の一つと思われる。
 
 
1.2 Physicians for Social Responsibility (PSR)
    相手:Eric Chivian教授 9月23日
       ハーバード大学医学部 Center for Health and the Global Environment所長
        1985年核兵器廃絶に関する活動でノーベル平和賞受賞者の一人
 
【設立】
1996年。UNEPの協力センターであり、米国医学部として始めてのケース。
【目的】
学際的な研究、教育、政策プログラムを通じ、世界の人口増加、気象変動、有害物質汚染などが、人間の健康にどのような影響を及ぼすかの理解を広めること。
【設立の背景】
米国での環境運動は1970年4月のアースディから活発になり、最近の世論調査では、70〜80%が環境に熱心だと答えているが、この数字はあまり当てにできない。なぜなら実際には環境が何かと言うことを正確に理解していないため、企業の宣伝にすぐのせられてしまう傾向がある。例えば、「環境保護のために木を切らなかったら、あなたは職を失う」と言われれば、すぐに寝返ってしまう状況。だから企業もそうした手法を使う。

同じような脅しが気候変動問題でも起きている。例えば、石油会社では、もし京都プロトコールを認めれば、一人当たり数百ドル支払わなければならず、その結果、航空運賃も農産物も値上がるといっている。

こうした状況を踏まえ、2年前に地球環境問題の健康影響を普及・啓発するためのセンターを設立。科学的文献の上で、益々地球環境変動のために健康被害が起きていることを人々に知らせ、人々に直接健康に触れる話をして理解を深めてもらうようにしている。ただ、科学的議論だけではあまりに抽象的且つ複雑で一般の人には理解してもらえないため、直接話すようにしている。一方、一般の医学者の多くは環境について知ろうとしていない。そこでハーバード大学の医学生に対して、地球の異変が健康にどのような影響を与えるかを昨年から教え始めている。これまで、なぜ医学界が環境に関心を持たないかったかはなかなか難しい問題。今世紀はじめに、医学界は産業界が原因となる大気汚染などには関心を持った。しかし、医学は通常患者に即した臨床医学に関心を寄せているため、患者を相手にした治療と公衆衛生が離れてしまい、お互いに没交渉になってしまったことによるものと思われる。
【主な活動】
医学生や医学関係者に環境教育をすることがセンターの主な仕事であり、やっていることを権威ある医学雑誌に発表している。
 
同時に、ワシントンで議員や行政官に対して説得活動もしている。またマスコミの活用も行っている。例えば、京都会議に関する我々のアピールをニューヨークタイムズ12月号に掲載した。京都会議の2週間前の世論調査で、企業に雇われた科学者に対して市民が疑いを持っていることがわかったため、ある企業が広告を中止したので、その機会を利用して、比較的安価に我々の主張を載せることができた。
【最近の動向】
2年前からハーバード大学の医学生に対する環境教育を始めているが、これは患者への治療と公衆衛生的な考え方を結びつけるもの。これは従来の医学教育では考えられないことだが、医学界でも少しずつ変化が生じている。最近になって、夏の異常な暑さによって実際に多くの人が被害を受けたり、マラリアのような伝染病の状態も変化が生じていることも、その変化の大きな要因と考えられる。医学生が環境問題に関心を持つようになり、このことが財団が医学生に教えることを可能にしている。

また、こうした状況を踏まえ、最近やっと我々の言動をマスメディアや政治家が取り上げるようになってきた。

人々も、今まで環境問題は自分とは関わりないものと思っていたのが、最近になって自分自身の問題だと理解し始めた。例えば、エルニーニョや海洋生物問題と健康が結びつくようになってきた。

将来に希望は持てる。しかし気候変動による疫病が起きるなど、最悪の事態が起きないとアメリカの政治は変わらないのではないか。テキサスは今年の夏何週間も非常に熱く、100人以上の死者が出た。それで人々が異常に気づき始めた。また、ここ数年洪水が頻繁におき、農業が被害を受けた。タイム紙とライフ誌が特集を組み、現在の異常気象は人間が原因であり、何かしなければならないということを書き始めるなど、マスコミも変わりつつある。
【京都プロトコールに関して】
米国議会が京都プロトコールへの批准を拒否しているのは、現在の議会はここ数十年で最も保守的で反環境的なため。環境保護は米国の経済を破壊しようとしていると宣伝されている。クリントン体制が弱体化しているため、しばらくの間、議会は反環境だろう。下院の80%はパスポートを所持していないといわれるくらい、国内の問題にしか関心を持っていない。国連の問題にも関心がないという状況だ。

また、国民の多くはアカデミズムに敬意を持っているが、議会はほとんど持っていない。今は非常に困難な時期であり、我々の責務も重いが、京都プロトコールの批准には時間がかかると思われる。

次期大統領選で環境問題は問題にならないだろう。ゴアは環境に熱心だが、政治的に弱い立場にある。
【なぜアメリカではNGOが大きな力を持ち得たか】
米国のNGO活動にとって最も大事なことは、個人及び企業に対する所得税法であり、この税法なくしてNGOは存在し得なかった。大金を持っている人たちは、公益団体に寄付しなければ税金が高くなる。慈善のためばかりでなく、自分たちの税を安くするためにNGOへの寄付をを行っているということも考えられる。
(感想)
日本では、公害問題時代は公衆衛生の立場から多くの医学者が環境問題に対して発言し、その解決に貢献してきたが、最近の地球環境問題に関して、積極的な活動はあまり見られない。その原因は、アメリカと同様と考えられる。

しかし、環境ホルモン問題に多くの人が関心を持つようになったことからも明らかなように、大衆を環境問題に引きつけるには、環境問題によって引き起こされる環境破壊が人体にどのような影響を及ぼすかを知らせるなど、自らの健康と環境問題を結びつけることが最も効果的と思われる。

そうした意味で、医学者が環境問題に対して行動することは、社会的にも大きな影響力が期待されることであり、今後日本においても医学界の環境問題への行動が期待される所であろう。
 
 
1.3 Second Nature(SN)
    相手:John Glyphis氏 9月23日
 
【設立】
1993年に設立されたNPO。名称の意味は、環境に対して持続性を持つことが、人間としての二番目の本能になる ようにという意味が込められている。
【目的】
持続性のための教育を大学教育のカリキュラムに入れることに関心を持っている教授陣に対して、教育、助言、教育材料提供を行うと同時に、大学運営を環境にやさしくすることによって、将来のリーダーに教育を行い、社会を変革すること。

米国には、3700の高等教育機関(大学)、1400万の学生、75万人の教授陣がおり、年間1650億ドルが高等教育機関で使われている。高等教育は将来のリーダーを育成する場であり、その学生の価値観を変え、社会を変えることが目的。
【予算】
主にオランダ、デンマーク系の財団などから資金提供(年間予算100万$=約1億3000万円)を受けている。そのほかワークショップなどの自主事業による収入。
【スタッフ】
12人、インターン4〜5人程度で、主にプログラム作成、トレーニング、資金づくりを行っている。
【主な活動】
テキサス南大学、南カリフォルニア大学などで、教育活動を実施。手法としては、スウェーデンのナチュラルステップの手法などを用い、コンピューターを活用している。
また事業の具体的内容としては、
@ナチュラルステップの方法を用い、大学システムを持続性に向けて変化させる
A持続性を大学教育に採り入れて変化させる
B地域の人と一緒に活動する方法を学ぶ
であり、特に「持続性」の他に、「公正さ」が重要と考えている。
    
【主な活動であるワークショップの具体的事例】
・費用・・・1日平均約2500$(全体で)で研修を実施
・プログラムの代表例
1日目 参加者の自己紹介、
     代表者の講演「大学における制度の変革」とそれについての議論
2日目 アウトドア活動
     「大学教育変革のために何をすべきか」についての議論
     スピーカーの発表
3日目 自由グループ付議論
・目的
@持続性についての深い理解
A全体を考える力・システムを考える力
B人と人とのふれあい
  
1.4 Union of Concerned Scientists(UCS)
    相手:事務局長 Howard Ris氏他 9月24日
 
【設立】
1969年
【目的】
科学と技術がきわめて重要な役割を果たしている領域で、責任ある政策が採られるように活動する団体。

具体的には、国内の多くの優れた科学者と、関心を有する多数の市民との間にユニークな連携を形成し、この連携により、最も重要な環境問題及び安全保障の問題に対処すること。
【会員】
5〜6万人
【予算】
1997年度 収入660万$(うち49%基金、18%パブリックスポンサーシップ、17%キャピタルキャンペーン、10%寄付)支出490万$(募金活動に85万$使用)

主にエネルギー基金、エネルギー省基金などの支援を受けている。
【事務局】
スタッフ54人、ボストン、ワシントン、バークレーにオフィスを置く。
【具体的活動】
@地球資源・・COP3に105人のノーベル受賞者を含め1572人の科学者の署名を得て、アピールを出した。
・一般人と政治家などの気候変動問題に対する理解を深めるための活動。(ニュースレター、冊子などの発行)
・気候変動に関する科学サミットの開催。
・地球温暖化に対する記事を書いてもらうようにマスメディアに対してキャンペーン。
・政府が国際的な家族計画に対して資金提供をするように圧力をかけた。
Aエネルギー問題、特に再生エネルギー問題
・再生資源による電力を最小限義務づける法案を作成し提案するとともに、「再生エネルギー信託基金」を作った(マサチューセッツ州)。
・再生可能エネルギー技術開発費を3500万$増加させた。
・原子力発電所の安全問題を取り上げ、プラント閉鎖に導いた。
・原子力規制委員会に対して、他の原発について調査させた。
・ミネソタ州1.5メガワットの風力発電を作らせ、グリーン電力を提供。アイオアでは、105メガワットの再生可能エネルギーの電力で5万世帯にグリーンエネルギーを提供。
B交通問題・・渋滞時対策と大気汚染対策を含む陸上交通効率法の強化によりクリーン自動車と代替交通技術開発費を獲得。
・メイン州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ベルモント州に対しても、低公害車導入をねらったカリフォルニア州と同様の規制を実施しようとすることに反対する自動車業界及びEPAの活動を阻止。
・現政権がより厳しい大気の環境基準を承認するよう活動家を動員しメディアに働きかけた。
・マサチューセッツ州の法律に対して低公害車購入のためのインセンティブが働くよう働きかけた。
C農業及びバイオテクノロジー、武器のコントロールと国際的な安全補償問題
(補足)
これまで、科学者としてマスメディアへの強力な働きかけや市民への働きかけは邪道だと思われているが、それは必要なことと考え積極的に行っている。

例えば、地球温暖化に関しては、京都会議で合意を得ることの重要性を政界の要人やマスメディアに対して積極的に訴え、アメリカ政府代表団が温室効果ガス7%削減を受け入れるように精力的に働きかけたという。

また、メディアが環境に関する記事やニュースを正確に取りあげるよう主要な記者に日常的に接触し、科学的に間違った記事が掲載された場合は積極的に反論しているという。
(感想)
科学的な知見に基づき、積極的に一般市民に対する広報活動を展開すると共に、政治家に対しても専任スタッフを置き、日常的にロビー活動を展開しているとのことであった。

日本の場合、科学者はどちらかというと特殊な一種の閉鎖社会にいる人々であり、一般市民との連携は勿論、政治と結びつくことは邪道と考えられている。よって、折角の科学的知見が社会的に生かされない場合が多い。

しかし、今日の地球環境問題は科学的知見を抜きにしては考えられない課題であり、科学者の責任は非常に重大なものと考えられる。自らの研究領域に止まることなく、科学者同士が連携し、的確でわかりやすい科学情報を日常的に一般市民に対して広報していくと共に、それをもとに政治家にも環境問題の重大性について積極的に訴えていくようなしくみが日本にもいち早く誕生することが期待される。
 
 
1.5 Conservation Law Foundation(CLF)
    相手:Peter Shelley氏 9月24日

【設立】
法律家などを中心に、1966年ニューイングランド地方の公益団体として設立。
【目的】
法律を最大限活用して、自然資源の管理を改善し環境と公衆衛生を守ること。
【会員】
16000人いるが、熱心なのは8000人程度。
【会費】
25$以上
【年間予算】
400万$(うち3割が会費、6割が基金、1割が事業収入)。
【具体的活動】
裁判所から自治体に至るまで、弁護士を中心に、科学者、政策専門家の活動を通じて自然環境や農地を守り、都市の環境を改善し、水産資源を守り、健康被害を少なくし、水や大気汚染を未然に防止し、環境にやさしく経済的に効率の高い地域政策をするよう働きかけている。その結果、全国的に活動が認められているが、地域密着型が基本。

政治家へのアプローチはしないが、裁判で発言できる。その根拠となっているのは行政手続き法と環境法。(ドイツ29条と同様)ジャーナリストへ影響を与える。理事会・会報の編集委員会のメンバーにする、主要新聞の論説委員や記者へのアプローチを積極的に行うなど。

自主事業活動としては、年間15回程度のワークショップを開催。
【その他】
アメリカにおける禁煙運動は、子どもを通じて行って親にもインパクトを与え効果的だったが、環境もそのようなことが大切ではないか。
(感想)
法律家という専門性を生かし、環境保全のために活動する動きは、最近日本でも、廃棄物特に産業廃棄物問題で見られるようになっている。しかしそれはごく一部の弁護士であり、この団体のように数多くの弁護士がシステム的に結びついて活動しているわけではない。

一方、アメリカは裁判の社会であり、法廷が一般市民にも開かれた場になっていることが、こうした活動を可能にしているものと思われる。「法廷での活動が一般社会への影響力を発揮できる場」と明言しているあたりはアメリカらしい。またこうした場への立ち会いが制度面で保障されている点もアメリカらしい点と言える。

因果関係、形態共に複雑化している昨今の環境問題解決には、科学的知見同様、倫理的考え方や法律といったものが重要な意味を持つことから、日本で芽生えた法律家の環境保全活動の今後の動きが注目される。

「活動に当たっては、住民サイド、企業サイドのどちらにつくというわけではなく、あくまで将来世代にとって最も望ましいと思われる考え方に立って弁護活動を展開している」とのことであった。
 
 
1.6 Mass Audubon Society(MA)
      マサチューセッツ州オーデュボン
    相手:Bancroft R.Poor氏 9月25日
 
【設立】
1896年、2人の女性によって設立。
【目的】
州の自然資源を保護、教育、行動を通じて守ること。
【スタッフ】
180人。科学者、教師、ボランティアが強力なネットワークを作っている。
【施設】
現在18の常駐スタッフのいる野生生物サンクチュアリーとセンターがある。
2つの事務所、一つの立法関係事務所(州の立法に働きかけるところ)をもつ。
【会員】
6万所帯
【会費】
学生20$、個人37$、家族47$、賛助60$、保護75$、ドナー100$、スポンサー250$、パトロン500$、リーダーシップ1000$
【特典】
会報年6回が届けられる他、特別の日以外は全て入場無料、プログラム参加費の割引。環境図書館リンカーン本部で本を借りられる。
【予算】
年間1260万$、ほかに8000万$の基金。
【主な活動】
@教育活動
・対象は子ども、成人、教師が中心で、毎年40万人以上が参加。
・毎年14万人以上の学童がデイキャンプやサンクチュアリに参加。サマーキャンプ参加者は5000人程度。
・成人・家族に対しては、湿地帯での自然観察、節水、コミュニティ活動など。
・教師に対しては、環境科学、博物学などの教育法を指導。
・年間3000回のワークシップ(理科教育に対する補助金によって実施)を開催、4400人程度の教師が参加。その他ニュースレターの発行。
Aロビー活動
・湿地保全、水源保全、野生生物保護活動のために、活動家、自治体職員、会員と一緒にロビー活動を行う。
・ロビー活動専門のフルタイム職員が2名いて、州議会に、強力な環境法を創るように働きかけている。
・今までに1990年危機に瀕した生物種法、1992年に水源保護法を成立させた。働きかけだけでなく政策立案もする。
B土地の保護
・土地の買い取り、1922年最初のサンクチュアリ買い取り、現在28000ha所有。
・協会としては土地の保護は単に生物学的な問題だけでなく、飲み水・空気・空間の確保のためにやっている。
・最近は買い取りだけでなく使用権(開発権)を買っている。これだけ費用は比較的安く効果的。
・その一方で州政府や自治体に土地を買わせるためのロビー活動も行う。
・目標としては、州内の誰でもがスタッフのいるサンクチュアリに20分以内でたどり着けるようにしたい。
・州に飛んでくる渡り鳥保護のための活動。
C研究及び保護活動
・持続的に最大限の生物の多様性を守るために、自分たちの活動の検証及び観察研究継続。
(補足)
全米でも古い歴史を持つNGOであるオーデュボンだが、全国組織からは独立した活動を展開している。

組織が古くなると、保守的になって新しいことができないという危険性もあるが、ここでは、新しい会長になってから積極的にプロモーションし財政状況が向上。97年には、100年の歴史の中で初めてラジオで宣伝活動を行うなど、積極的に会員獲得活動を展開している。

州内には、環境NGOがたくさんあり競争状態にあるため、会員を拡充するためには特徴を持ち、常に新しい活動を展開することが必要となっている。また充分な活動の為には資金が必要であるが、それに関しても専門のスタッフを置き、様々な財団からの寄付金集めも積極的に行っている。

政府の補助金はあまり当てにしておらず、理事会メンバー(30名)の中に、多様なメンバー(金持ち、知恵持ち、時間持ち)を揃え、この人たちの力を活用することが多い。

(感想)
当協会は、自然環境保全のためのNGOとして世界的に有名であるが、ここもその名に甘んじることなく、積極的に活動のための資金集めを行い、メディアを活用した広報活動によって会員獲得につとめていることがわかった。そのための専任スタッフも数名は位置されており、何でもやらなければならない日本のNGOとの違いを痛感した。

また、NGO間の会員獲得競争も激しいということで、常に新しい活動を心掛けている点も、NGOというよりはむしろ企業的感覚で全てが行われているように思えた。

さらに、理事会のメンバーも資金集めや広報活動に有利と思われる人材を配置し、活用しているなど、理事会一つとっても戦略的に行っている様子が伺われた。

一方、実際の活動としての環境教育に関しては、独自のフィールドを数カ所所有しており、日常的にきめ細かな環境教育が実施されている様子も伺われた。訪問当日も、学童がバスで訪れていたが、到着すると一クラスが5〜7名程度の小グループに分かれ、それぞれに専門のスタッフが配置され、動植物とのふれあいなどを通じての環境学習が行われていた。教師はこの間学校に戻って待機しており、学習が終了した頃に再度バスで迎えに来るのだという。学童の環境教育についても学校の教師だけが行うのではなく、専門家と連携して行われている点は日本でも見習うべき点と思われる。
 
 
1.7 The Ecotourism Society
        環境保護と旅行を世界規模で結びつける
    相手:Megan Epler Wood氏 9月25日
 
【設立】
1990年設立の小規模の国際的組織。
【目的】
エコツーリズムを一つの手段として、自然保護をしていくこと。自然の中を観光する点では、ネイチャーツーリズムと似ているが、エコツーリズムは常にその地域の持続性を念頭に置き、その地域の持続性に貢献することを目的としている。

エコツーリズムプログラムは、訪問先にとって保護のための利益を生み出さなければならないし、同時にその地域の人々が持続的に仕事ができるようにしなければならない。
【会員】
1400人
【会費】
学生15$、エコツーリスト35$、専門家50$、団体100$、賛助500$、支援団体1000$
【年間予算】
20万$
4.5名のスタッフ、2名のインターン。基金からも少ないが出ている。
【設立の背景】
観光は過去10年の間に世界最大の産業になっている。1994年に、観光に使ったお金は4160億$で、これは世界総生産の6%となったが、同時に、公園や自然地域への観光増加は重大な関心と懸念をもたらしている。

例えば、コスタリカでは国立公園を訪れる外国観光客は6年間で330%増加、ネパールのアナプルナ地方(世界中から来るトレッカーのメッカ)では過去10年間に130%増加している。最近の調査によれば、約800万人の米国の旅行者は、少なくとも一回は自然地域への観光をしており、3年以内に3500万の旅行者が参加するであろう。

こうしたネイチャーツーリズム産業の増大に伴って、持続可能な旅行のモデルを作る必要性は高まってきた。
【特典】
ニュースレター年4回、本の割引。
【主な活動】
出版と教育事業。エコツーリズムを実施するための最良のテクニック(成功例)をこの分野の世界中のプロと協力して本として出版している。
【長期的目的】
  1. 教育研修プグラムグをつくる
  2. 情報サービスを提供すること
  3. 職業に対するガイドラインとモニタリングプログラム
  4. この分野の企業・個人プロの世界的なネットワークづくり、現時点では70カ国
【エコツーリズムの7つの指針・信条】
  1. 訪問地の自然・文化的な環境の特性や本来あるべき姿を存続するのに、ネガティブなインパクトを与えたり破壊しないように配慮すること
  2. 旅行者に環境保全の大切さを教えること
  3. 自然地帯の保全あるいは保護地区の運営に歳入をもたらすことをを目指すこと
  4. 地域コミュニティ及び隣接する保護地区に収益をもたらすこと
  5. 観光産業はデスティネーションの持続的な発展を目指したプランニングを重視し、当該地がそれぞれ持つ社会・環境上の許容範囲を超えないよう、細心の配慮を払うこと
  6. 地元ベースの施設やサービスの利用を重視し、受け入れ国にできるだけ利益をもたらすよう配慮すること
  7. 環境との調和に細心の配慮を払った開発による社会基盤構造を基本とし、化石燃料の利用を最低限に抑え、地もとの植物や野生生物を保全し、自然環境との調和を図ること
【エコツーリズムに対する動向】
ワールドバンクは観光事業に失敗したため、エコツーリズムから手を引いているが、ジョージワシントン大学がエコツーリズムに熱心で支援してくれている。
【事例・・・エコツーリズム・計画及び管理ワークショップ】
  1. 基本・・歴史、将来のトレンド
  2. エコツアーにコミュニティを参加させること
  3. コミュニティに力をつけること、マーケット戦略、資金づくりなど
(感想)
非常に小さな組織で、活動内容は自らがエコツアーを行うというより、その考え方を出版物を通じて世間に伝えていくこと。実際の活動資金も出版物販売収入がその大部分を占めているという。基金などへの申請も頻繁に行っているらしいが、競争が激しく獲得するのも難しい状況にあるらしい。

また、活動に関心を持ち就職を希望する若者も多いらしいが、財政的にこれ以上のスタッフを抱えることは困難とのことであった。しかし、税法上、収入に対する控除もあるらしい。

一方、ここが行っているような活動、すなわち普及啓発や環境教育的な事業は、現状の日本では会社組織で行われている場合が多い。しかし、普及啓発や環境教育的な事業は、本来公的な事業であり、営利目的の企業としてやっていくにはかなり困難な場合が多い。実際、日本で環境教育で経済的に充分成り立っている企業は皆無に等しい。しかし、NPOになっても何の特典もないのが今の日本の現状である。NPOになったからといって財政的に活動が円滑にできるだけのものが確保できるわけではなく、むしろ自治体などからの受託事業が困難というデメリットの方が大きいのが現状である。

確かに、税的優遇措置がとられているアメリカでも、活動資金獲得のためにかなりの苦労をしている様子が伺われた。しかし、普及啓発や環境教育的活動はあくまで社会貢献事業であり、こうした活動を営利目的の企業活動と同等に扱っている現在の日本のシステムでは、こうした分野のNGO・NPOが育ちにくいのは事実である。

そうした意味でも、環境教育のような社会貢献的事業が円滑に行えるよう、早急にシステムを整備(具体的にはNPO法の中に税法上の優遇措置を盛り込む、NPOとしての法人格の付与条件をさらに明確にするなど)していくことが肝要と思われる。
 
 
1.8 Natural Resources Defense Council(NRDC)
    相手:Ashok Gupta氏 9月28日

【設立】
1970年、法律家が中心になって設立。
【目的】
環境問題を法律的な視点から考え、解決していくこと。
【会員】
40万人、特にこの五年間で倍増。
【事務所】
ニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、ロサンゼルスに事務所。
スタッフ170人、資金づくりに10名の専任スタッフ。弁護士事務所を参考に運営。
【会費】
10$、15$、20$、50$、その他
【年間予算】
3000万$(会費収入は30%程度、残りは寄付と基金)。
【主な活動】
@大気エネルギー問題特に気象変動問題
A湾岸地域特に水産資源
B環境衛生
C森林・公園などの土地利用問題
Dその他都市問題、国際問題
などについて、特に法律問題を中心に活動している。

単独の活動だけでなく、他のNGOと連携した活動も展開。その例として、グリーングループミーティング*を展開している。 
グリーングループミーティング
環境保護のNGO約30団体で、月1回程度のミーティングをワシントンで開催し、情報交換と調整会議を行っている。具体的には、議会の環境問題対応の後退を阻止したり、粒子状物質の環境基準設定問題、森林、野生生物保護の問題、気候変動問題などについて。議長は参加NGO間で交代制で行っている。
【社会的な大きな流れを作る方策として・・・アドボカシー】
メディア、議会、公務員、企業人にあって、政策事項について説明し説得することを積極的に行っており、会合や手紙を書くことなど、これに時間の90%使っている。

定期的に電話をかけ、会合で会えば必ず話しかけ、長い時間をかけて人脈を作ることが大切。
【会員拡大のための手法】
会員拡大のために、ダイレクトメール(DM)、ラジオなどでの広告を行っている。特に今年の夏はテキサス州が熱かったので、それに焦点を当てて気象変動問題を取り上げた広報活動を展開。

会員拡大に当たっては、年間予算の10%程度を当てている。
【温暖化問題について】
京都プロとコールは、とても良い議定書と考えている。将来の発展のための確固とした礎石になるもの。これを成功させるには、地方でのキャンペーンが必要と考える。

2000年の大統領選で、環境問題は大きな問題にはならないと思うが、環境派の進出を期待。エネルギー産業が温暖化対策に強く反対しているために、現時点では議会では温暖化対策は進んでいないし予算削減さえ考えているが、外堀を埋めるように、地方や関心ある企業を巻き込むことによって、対処していきたいと考えている。

また、議会が反対している理由に途上国がのってこないということがあるので、特に中国やインドに対しては大気汚染対策を進めることは公衆衛生問題解決につながるとして、温暖化を表に出さずに説得に当たっている。
(感想)
立派なオフィスを構え、スタッフも日本のNGOのイメージとはかなり違い、まさに企業人という感じてあった。
ここでは、資金調達のための専任スタッフを10名置いている旨であったが、実際、どのような財団が、どれくらいの基金を持ち、過去どのような活動を支援したかという資料を備え、それを参考に事業計画案を相当数作成し、随所に提出しているとのことであった。

また、一般への啓発より、社会的に大きな力を持つ議員、メディア、行政等への働きかけに力を注いでいる点も、日本には少ないタイプのNGOと感じられた。しかし、このような活動ができるのは、政策形成能力を持つ有能なスタッフがいるからであり、そうした人材を確保できるだけの財政基盤があることに他ならない。「社会を動かすには、自らが政策形成できる力を備えること、それには有能な人材が必要であり、資金もまた必要である。資金獲得のためにはあらゆる努力を惜しまない」というアメリカのNGOのしたたかさが伺える。しかしその一方で、地道な人脈づくりも行っており、多様な方法で活動基盤を確立し、社会に働きかけている様子も伺えた。

また、グリーングループミーティングといった手法で、いくつかのNGOが特に議会を動かすために連携し協力しあっているとのことであったが、この点については、昨年の京都会議やNPO法制定の過程で、日本の環境NGOも連携して活動した経緯もあり、その基盤はあると考えられる。今後それぞれの組織がさらに自力をつけるとともに、互いにNGOとして競争しつつも社会変革のために協力できることは協力しあうという柔軟性を持つことによって、社会を動かす大きな原動力になりうるのではないかと考えられる。
 
 
1.9 Environmental Defense Fund(EDF)
    相手:James T.B.Tripp氏 9月28日

【設立】
1967年、科学者を中心にしたNPOとして設立。
【目的】
将来世代を含む全ての人々の環境上の権利を守ることであり、持続可能な環境とは、公平で公正な経済社会システムによると信じている。

特に、地球環境問題に対して、科学者、エコノミスト、法律家を中心としたメンバーが、革新的、創造的、実際的な解決法を提示すること。

その行動は科学的評価に基づき、提案する解決策も科学に基づくものであること。
【会員】
30万人
【会費】
個人24$、ファミリー35$、コントュリビューター50$、その他
【年間予算】
2600万$
【事務局】
スタッフ150名、このうち約70名が専門家。
事務局はニューヨーク、ワシントン、オークランド、ボルダーなど。プロジェクトオフィスはボストン。
【主な活動】
当初、魚を食べる鳥の数が減少していることがわかり、これがDDTなど農薬汚染ではないかということで、ロングアイランド地方を中心に法律家と一緒になってDDT使用禁止の訴訟を起こした。この活動の結果、世論の関心を集めるようになり、ミシガン州などにネットワークが広がった。その後1969年DDTの使用禁止、1970年環境省設立、大統領府の中にCEQ(環境諮問委員会)ができ、これにより化学物質の規制がより広範に行われるようになった。

最近の活動としては、たくさんの環境問題の中から、4つにポイントを絞り次のような活動を展開している。
@気候の安定化
・温室効果ガスの削減を開始するホワイトハウスプラン作成を支援。
・地球環境問題に最初に関心を示した企業BPと共同して、BPの排出削減方法について検討した。
A人間の健康を守る
化学物質を販売している上位3の2の会社は、健康影響に関する基本的情報を開示していないことを示し、主要化学会社に対して実験し情報を開示することを要請した。
B生物の多様性を守る
メリーランド州と共に、河川に沿って10万エーカーの生物種の生息地域を回復するプロジェクトを作成。計画では農業からの汚染を防止するためにゾーン設定を行う。
C海洋の安全を守ること
ニューイングランド地方の水産資源管理審議会に環境サイドからの唯一の代表者として参加。同様に国全体の水産資源を改良するためのNASの二つのパネルに参加。
【会員拡大、住民の支持を得るために】
会の拡張に当たって、1969年に全財産を使って「母乳は安全か」という新聞広告をだし、これが会員拡大につながった。
また、住民の支持を得るためには、
@創造的なアイデア
 例えば、
排出量取り引き・・・硫黄酸化物についてのそれはここが出した。
それが今、気候変動問題の排出量取引につながっている。自動車が混在しているときに、橋やトンネルなど特定地域の有料区間で、高速道路使用料に差を付ける、など。
A裁判、訴訟に訴えること。これが効果的。
 が必要と考えている。
  
【なぜアメリカのNGOは力があるのか】
税制上の優遇措置が大きな要因となっている。アメリカの税法501(C)3(連邦所得税法)による。アメリカ全体では年間約2000億$(約26兆円)がNPO活動に集まるが、これはGDPの2.5%に当たる。

このうち40%が教育関係、40%が教会関係、5%が赤十字、1〜2%が環境を含むアドボカシー活動に使われている。

環境NPOのプロとして活動している人は、推定で全国で2000人〜3000人(TNCを除く)位になるのではないか。
 
 
1.10 The Nature Conservancy(TNC)
     相手:Charles Murcott氏 9月29日

【設立】
1951年、最初は生物学者の職業団体として設立。1955年、ニューヨーク州に60エーカーの最初の野生生物のためのハビタット購入。
【目的】
土地を買い取り、野生生物保護地区を作ること。
【会員】
83万人(企業会員1200社)
【会費】
25$以上
【スタッフ】
2400人
【年間予算】
4億3700万$
【主な活動】
最初は個人の寄付からスタートしたが、1970年頃から企業の寄付も呼びかけている。

反対運動ではなく、活動家的活動はしない、政治的ロビー活動はしない、企業と対立しないを原則とした活動を展開している。以前は土地を買うことによって、絶滅の危機にある種を保存することが中心であったが、現在はエコシステム全体を守ることに主眼をおいた活動を展開している。

生態学的に意味ある土地を、国内で1000万エーカー以上買い取り保護している。また海外では、5500万エーカー以上の土地を支援している。
【会員になることの主な特典】
  1. 隔月に発行される会報”Nature Conservancy”を入手できる。
  2. 個人会員証を入手でき、これは危機に瀕した生物種を保護することに積極的な役割を個人として果たしていることの証明になる。
  3. 興味あふれる野外旅行や保護区域での特別な行事に招待される。
  4. 住んでいる地域の近隣の絶滅危惧種の保護活動に参加できる。
  5. 当財団の州または国際事務所からのニュースレターが入手できる。これにより最新の  重要な環境情報に接することができる。
  6. 当財団ショップでの原則10%の割引がある。
(感想)
アメリカ最大級のNGOであるが、活動内容は「土地の買い取りにより地域生態系を保護すること」であり、いたって明解である。この明解さが会員数の多さに影響しているとも思える。環境問題には関心があるが特別の活動をするのは抵抗がある、しかし会員になり会費を支払えば環境保護のために貢献していることになる、こうした活動の容易さと満足感が会員数の拡大につながっているのではなかろうか。

一方組織側も、反対運動やロビー活動など特に目立った活動をするわけではなく、会費や寄付によって集まった資金を土地の買い取りに集中させている。こうした土地の買い取りによる生態系の保護という一点に絞った活動も、日本ではあまり見られない。しかし、これは明らかにアメリカの国土の広さが可能にしている活動とも言え、国土面積20分の1の日本では、こうしたタイプの活動はなかなか困難かも知れない。

2.総括
2.1会員数などの比較

設 立 スタッフ 会員数 会費 年間予算 主な活動
CWA 1970
75万人 25$〜 12万$ 地域レベルの環境保全
PSR




医学生への環境教育
SN 1993 12人

100万$ 高等教育機関への環境教育
UCS 1969 54人 5〜6万人
660万$ 温暖化問題等に科学的知見で対処
CLF 1966 50人 1.6万人 25$〜 400万$ 法律家として広報活動並びに法廷での活動
MA 1896 180人 6万世帯 学生 20$〜
リーダー 1000$
1260万$ 州の自然保護のための教育・広報活動
TES 1990 4人 1400人
20万$ エコスーリズムに関する出版活動を通して自然保護
NRDC 1970 170人 40万人 10$〜 3000万$ 法律的な視点からの環境保護活動
EDF 1967 150人 20万人 24$〜 2600万$ 科学的な視点から、革新的、創造的、実際的解決策提示
TNC 1951 2400人 83万人
4億3700万$ 土地の買い取りにより野生生物種の保護

2.2全体的な特色

(1)豊富な財源

 訪問したどのNGOも、活動を積極的に展開しているだけでなく、事務所、スタッフの給与等に関しても、日本のNGOよりはるかに豊富な財源を持っているように見えた。実際、慈善事業、教育(私立学校。これにはハーバード、イエール、スタンフォード、MITなどの有名校も数多く含まれる)、環境保護などの分野全体で民間に集まる資金は、年間約2000億$(約26兆円)にも及ぶという。
 こうした巨額が民間に集まるのは、アメリカの税制に大きな要因があると思われる。即ち、アメリカでは、ある一定要件を満たすNPOであれば、個人や企業の寄付や会費支払いに対し、所得から控除が得られる税制上の優遇措置が設定されている。勿論、NPOも専任のスタッフ(fund raising)を置き、資金獲得のための様々な努力を行っているが、支払う方からすれば税金として支払うと同じように、寄付や会費支払いの形で社会に貢献できることになり、このことがNPOの活動を財政的に支える大きな要因になっている。
 昨年日本で成立したNPO法についても、税額控除要項が最も重要とされながら、削除されたという経緯があるが、これなくしてNPOの健全な活動は成り立たないことが、米国との比較(昨年調査したドイツにおいても同様の控除がある)からも明白である。

(2)会員の多さ

 会員数は、日本のそれに比べればはるかに多いことはよく知られている。しかし、会員獲得のために、マスメディアやDMなどを活用した積極的な広報活動を展開し、そのための専任スタッフが配置されていることはあまり知られていない。また、 NGO間の競争もかなり激しいらしく、社会を動かすために活動の上では連携を取りつつも、常にライバルとして、それぞれの活動をより魅力あるものにしていく努力を日常的に行っているようだ。
 こうした会員獲得のための努力とともに、NGOの会員になることによって様々なメリットが生じることも、会員数の多さの一要因と思われる。即ち、NGOが社会的に認知された集団であることから、たとえ一個人であってもその活動に参加すれば社会に何らかの影響を及ぼすことができるといった満足感、さらには税制上も優遇されるという、物心両面でのメリットが会員には与えられるという点である。
 日本ではNGOが未だ社会的認知を得ておらず、税制面だけでなく精神的な満足感さえ少ない状況では、会員数が少ないのは致し方ない状況なのかもしれない。

(3)ビジョン、活動目的、活動内容が明確

 今回訪問したNGOの活動は、それぞれの団体のビジョン、当面の活動目標、活動内容、対象が明確に示されていた。
 例えば、UCSは科学者の集まりらしく科学的研究に基づき主に地球環境問題についてのロビー活動と広報活動を行う、CLFは法廷活動を通じて地域環境の保全に努める、SNは高等教育機関のみを対象とした環境教育を行う、同じ環境教育でもMAは子ども・教師・親子を対象に自然環境教育を行うなど、それぞれの活動の目的を明確にし特色を生かした活動を展開していた。

(4)政治家やマスコミを有効に活用する

 日本の場合、現状では草の根的な活動が多く、政策提言をしながら政治家に積極的に働きかけたり、マスコミ等を活用して社会全体に呼びかけるようなアドボカシー型の活動はあまり存在しない(京都会議では少し見られたが)。
 それと比較して、アメリカでは政策提言やロビー活動を活動の柱に置くNGOも数多く存在しており、これは、NGOが善意の市民の集まりとしてよりはむしろ、プロ集団として社会の仕組みづくりに貢献していることを示すものである。
 また、専任のスタッフを置き、マスコミを活用するあたりは米国らしい方法と感じたが、マスコミの利用は大衆を巻き込むのに最も有効な方法であり、こうした手法を日本のNGOも今後学んでいく必要があろう。但し、こうした専門的な活動が展開できる裏には、税制的優遇措置 →有能な人材を集められるだけの財政基盤 →ロビー活動・広報活動といった流れがあることがやはり大きいと思われる。

2.3アメリカのNGO活動をさささえるもの

(1)税制

 前述したように、アメリカではNGO活動が一つの組織として継続的に運営され、社会的役割を果たせるよう、それを支える社会システム(税制)が存在している。これはアメリカ建国以来の精神を引き継いだものと言えよう。
 アメリカでは、政府に迫害されたり政府に反対してきた移民が中心となって国づくりが進められたことから、政府に対する信頼感は初めから低く、政府の権限を拡大することに懸念を感じていた国民が多く存在する。そのため、政府機関を牽制するだけの力を持つNGOを育てておくことは彼等の意向に添うものであり、これを育てる社会システムを整備しておくことは当然のこととして行われてきた。このことがNGOの活動基盤となり、社会的に認知される活動にもつながったと考えられる。
 政府だけに全てを任せるのではなく、全ての市民が自由と責任の名において、自らが社会の維持・創造のために活動するといった民主主義の精神と、それを可能にするシステムが、NGO活動を支える一つ目の大きな柱になっているように思える。

(2)市民の社会的貢献に対する意識の高さ

 アメリカを形作ってきたリーダーの多くはキリスト教信であり、このことが社会への貢献を当たり前のこととしてきたように思える。即ち、自らが得た富を社会の正義や恵まれない人々への寄付として差し出すことは、人として当然のことであり、その行為を褒め讃え受け入れることもまた当然のことである。こうした精神が今なお米国社会、特に中高年齢層には強く息づいており、このことがNGO活動を支える二つ目の大きな一つの柱になっているように感じた。

2.4今後の日本のNGOの課題

以上のようなことから、今後日本のNGOとして学ぶべき点について考察してみた。

(1)明確なビジョンと活動内容を示す

 どのようなビジョンを持ち、それを実現するために具体的にどのような活動をするか、その道筋を明確に示すことは、NGO活動の基本である。
 しかも誰にでも納得できる形で示すことが大切で、これが、会員の拡充 →活動の拡大→社会への影響力、といった流れを作り出す基本になると考えられる。

(2)自立した精神と柔軟なアプローチ

 財源的に厳しい状況にある日本のNGOは、「どこにも頼らず細々とやる」か「多少意にそわなくてもスポンサーを獲得する」方法で活動する傾向があるが、これでは社会を動かすだけの十分な活動は困難である。
 精神的にはどこにも依存せず、自らが掲げた明確なビジョンに向かって行動する、しかし、会員拡充や資金調達に関しては、恥ずかしがらず「社会貢献のための活動には財源が必要」なことを様々な手法を駆使して積極的に社会にアピールしていく。こうした自立した精神と柔軟なアプローチが日本のNGOにも必要であり、そうした行動がNGOを社会的に認知させていくことにもつながるのではなかろうか。

(3) 持続的な財政基盤

 持続的な財政基盤を確保するためには、米国のように社会システムと人々の意識の双方が必要であり、将来的には両方を確立していくことが大切であろう。
 しかし、人々の意識改革には長い時間がかかることから、当面は昨年成立したNPO法の中に、税の優遇措置を入れることを働きかけていくことが必要であろう。
 また、教育活動の中で、ボランティアの領域を拡大させ、社会貢献の意義や大切さについて継続的に子どもたちに伝えていけるよう、教育内容そのものを改善していくことも必要であろう。
 持続的な財政的基盤 →有能な人材の確保 →ハイレベル・多面的な活動 →社会への影響力につながる。

(4)政策形成能力

 日本のNGOに政策形成能力がないのは、財政基盤が弱く、有能な人材の確保が困難であり、プロ集団として成熟していないことが大きな原因と考えられる。
 その一方で、常に「お上・行政」を頼みにしてきた国民性とそれに支えられ拡大し続けてきた強固な行政システムにも原因があると考えられる。「NGOにはどうせ大したことはできない」という意識が政府・行政だけでなく、国民の間にもあることは否めない。
 しかし、昨今の社会情勢を見ると、この意識も急速に変わりつつあり、こうした時こそNGOが力を結集して時代に見合った政策提言を積極的に行っていく必要があろう。
 NGOの力の結集 →政策提言 →社会的認知・有能な人材の確保・ →財政基盤の確立、といった逆方向の流れを作り出すことも必要かもしれない。

(5)コミュニケーション能力

 日本のNGOはこれまで、「自分たちはいい活動をしているのだから、いつか誰かがわかってくれる」という意識が強く、他の人に自らの活動を積極的にPRしていくことをあまりしなかったように思える。しかし、これだけ情報が蔓延した社会においては、「働きかけずに待つ」だけでは、その活動を理解してもらえないのが現状である。(1)で述べたように、ビジョンや活動内容を積極的に伝えていく努力をしない限り、NGOが社会的に認知されるのは困難に等しい。
 PRの方法としては、マスメディア等の利用も考えられる。しかし、大量生産・消費社会を反映したマスメディアの利用だけでなく、環境教育的な要素も組み込み、直接的なアプローチの方法も駆使して、大衆とのコミュニケーション能力を高めていくことが必要であろう。
 情報があふれる現代社会においても、必ずしも「必要な情報が、必要な時に、必要とする人に行き渡っていない」という現状がある。この状況を踏まえ、多様なコミュニケーションの方法を学び活用していくことも、今後のNGO活動では必要であろう。

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